映画『ルパン三世 カリオストロの城』の主題歌「炎のたからもの」は、最初から順風満帆に形作られたわけではありませんでした。本作で映画初監督を務めた宮崎駿と、テレビシリーズからルパン・ジャズを確立してきた作曲家の大野雄二。希代の天才ふたりによる美学のぶつかり合いが、この楽曲の原点にあります。
当時、大野雄二が手がけていたルパンサウンドといえば、疾走感あふれるブラスセクションと洗練されたフュージョンが代名詞でした。しかし、宮崎駿が求めたのはまったく異なるトーンでした。「ルパンが過去を振り返るような、切なく枯れたバラードにしてほしい」。そのオーダーに対し、大野雄二はルパンの世界観を壊さずに物語の詩情を際立たせる極上のメロディを書き下ろします。
制作を手掛けた東京ムービー新社(現・トムス・エンタテインメント)のスタジオで、作詞の橋本淳による切ない言葉が乗せられ、日本コロムビアからリリースされたレコード盤は、当時のアニメソングの常識を覆す大人のポップスとして映画史に金字塔を打ち立てました。