盤を去った後も、彼女の表現欲求が途絶えることはなかった。大手出版社である文藝春秋から刊行された自伝や小説作品群は、勝負師の直感を文章に昇華させた力作として大きな話題を呼んだ。彼女が綴る言葉には、極限状態を生き抜いてきた人間特有の生々しいリアルさと、独特の美意識が漂っていた。
さらに、漫画原作として執筆した『しおんの王』は、ミステリー要素と本格的な盤上心理戦を融合させた傑作として高い評価を受けた。出版業界においても彼女の多才ぶりは群を抜いており、単なる元アスリートのタレント本とは一線を画す文筆家としての地位を確立。将棋というミクロな世界から飛び出し、ストーリーテラーとして広大な文化圏へと自らの表現を拡大していった。