『港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ』を語る上で外せないのが、あまりにも有名な決め台詞「アンタあの娘のなんなのさ」です。このフレーズは当時の流行語となり、老若男女が真似をする社会現象にまで発展しました。
この名フレーズが誕生した背景には、作詞を手がけた阿木燿子の鋭い観察眼と発想の転換がありました。当初、宇崎竜童から「歌ではなく語りを中心にした曲を作りたい」と持ちかけられた阿木燿子は、港町を転々とする謎の美女「ヨーコ」をめぐる男たちの証言をオムニバス形式で構成するプロットを構築。バーのマスターや港の男たちが語り継ぐヨーコの面影と、最後に聞き手へ突きつけられる「アンタあの娘のなんなのさ」という乾いた問いかけが、見事なドラマ性を生み出しました。
宇崎竜童自身、レコーディング現場でセリフの抑揚やタメを徹底的に試行錯誤し、ぶっきらぼうでありながら艶っぽい独特の言い回しを完成させました。ギターのチョーキングと絶妙に掛け合うセリフ回しは、日本のロックにおける語り芸の最高到達点として語り継がれています。