看護師という職業に対してセクシーなイメージが定着した背景には、単なる露出度の問題ではなく、人間の深層心理と文化史が複雑に絡み合っています。
第一の要因は、白衣の天使イメージ理由の裏返しとして存在する「弱者の心理的退行」です。病気や怪我で心身が弱った患者は、日常では他者に見せない排泄や清拭といったプライベートな領域を看護師に委ねます。この無防備な状態で受ける手厚いケアは、幼児期の母性体験や無条件の受容を想起させ、やがて独占欲や性的興奮へと転移しやすい心理構造を生み出します。心理学で指摘される「マドンナ・マグダレン・コンプレックス(聖母への憧憬と性的対象への欲望の混同)」が、医療空間という特殊な舞台で顕在化するのです。
第二に、看護師フェチ心理を決定づけた「絶対的な権力構造の逆転」が挙げられます。普段は社会的に優位に立つ男性であっても、病院内では指示に従うべき無力な「患者」となります。清潔なユニフォームに身を包んだ女性から指示・管理されるというシチュエーションは、支配欲と被支配欲(マゾヒズム)の双方を強烈に刺激します。
第三に、80年代から2000年代にかけて隆盛を極めた看護師エロ漫画や成人向けビデオ、サブカルチャーの記号化です。制服、聴診器、注射器といった医療器具がエロティックなメタファーとして繰り返し再生産された結果、現実の看護師とは乖離した強固なファンタジー体系が完成しました。