なぜ、デジタル百科全書が手元で瞬時に引ける現代において、わざわざ紙の「世界大百科事典」を探し求める人が存在するのか。その背景には、平凡社の創業者である下中弥三郎の壮大な思想と、当時の編集陣が注ぎ込んだ膨大な学術的熱量が関係している。
下中弥三郎は「知の民衆化」を掲げ、日本独自の百科事典編纂に生涯を捧げた。そこに執筆陣として名を連ねたのは、各分野の第一線で活躍した高名な学者や研究者たちだ。ネット上の断片的な情報とは異なり、体系化された解説、豪華な図版、さらには時代の空気を映し出した項目記述は、単なる辞書の枠を超えた「学術書・専門書」としての一次資料価値を保持している。研究者や収集家が買い求める理由は、まさにこの緻密な紙の知性に他ならない。