作品をめぐる議論が決定的な局面を迎えたのは、広島市教育委員会が平和学習用教材からの作品削除を決断したことだった。長年、被爆地・広島の平和教育の象徴として活用されてきたゲンだが、教育委員会は「浪曲を歌って金を稼ぐシーンや、鯉を盗む描写が現代の児童の生活実態に合わない」「被爆の実相を伝えるには別の資料の方が適している」との理由を挙げた。この決定は、全国の教育関係者や市民の間に大きなショックを与えた。
さらに、一部の自治体図書館や小中学校で「閉架措置」や「閲覧制限」が相次いで導入された。過激とされる拷問描写や遺体の描写が、子どもたちの精神的健康を脅かすというクレームに応じる形だ。だが、こうした動きに対しては「過酷な歴史の真実を覆い隠し、教育の場から臭いものに蓋をする行為だ」との強い異論も噴出している。