ブッチャーの晩年において最も深刻な影を落としたのが、2010年代に表面化した巨額の損害賠償訴訟とそれに伴う経済的困窮です。かつてアトランタ市内で大繁盛していたレストラン「ブッチャーズ・ハウス・オブ・リブス」を経営し、実業家としても大成功を収めていた彼が、なぜ破産寸前にまで追い込まれたのか、その背景には凄惨な法廷闘争がありました。
発端は2014年、カナダのインディーレスラーであるデボン・ニコルソン(リング名:ハンニバル)が起こした民事訴訟でした。ニコルソン側は「2007年の試合中、ブッチャーが事前の合意なくカミソリ(ブレード)を用いて額を傷つけ、自身の血液を介してC型肝炎に感染させられた。その結果、予定されていたWWEとの契約が破談になりキャリアを絶たれた」と主張しました。
オンタリオ州高等裁判所で行われた審理において、ブッチャー側は適切な抗弁を行わず、最終的に裁判所はブッチャーに対して約230万カナダドル(当時の為替レートで約2億3,000万円以上)の損害賠償支払い命令を下しました。この天文学的な賠償金請求に加え、晩年に信頼していた親族や関係者による資産管理の不手際や持ち逃げ疑惑が重なり、長年築き上げた財産の多くを喪失する事態に陥ったのです。