殻を割った瞬間に広がるツンとした刺激臭と、宝石のように黒光りする見た目に驚く人は多いはずです。白身が黒褐色に変化する最大の要因は、アルカリ熟成の過程で起きるメイラード反応(アミノ酸と糖が結合して褐色化する現象)にあります。
卵白に含まれるタンパク質が強アルカリによって分解されてゲル化し、琥珀色からダークブラウンの透明なゼリーに変わります。高級なピータンの白身の表面には、アミノ酸の結晶が松の針葉や雪の結晶のような美しい模様を描くことがあり、中国ではこれを「松花蛋(ソンホアダン)」と呼んで最上級品として重宝してきました。
気になる「アンモニア臭」や「硫黄臭」は、タンパク質がアミノ酸に分解される際に微量に発生する成分によるものです。しかし、この分解プロセスの副産物として大量のグルタミン酸をはじめとする旨味成分が凝縮されます。口に含んだときに広がるフォアグラや濃厚なチーズにも似た深いコクは、長期間の熟成がもたらす極上のアミノ酸の結晶なのです。