先代・鳴戸親方(元横綱・隆の里)の教えを愚直に守り抜いた田子ノ浦部屋での激しい稽古ぶ理は、稀勢の里の強固な下半身と「左のおっつけ」を作り上げた。愚直なまでの練習量が、彼の土俵での粘りを支えていたのだ。
しかし、あの平成29年3月場所で負った左大胸筋および左上腕二頭筋の損傷は、彼の最大の武器であった左の攻めを奪い去る。痛みを抱えたままの無理な出土はさらなる負傷を生み、連続休場という不本意な記録へと繋がってしまった。強靭な肉体と精神力を誇った男が、身体の悲鳴と葛藤する姿は、ファンの涙を誘わずにはいられなかった。