ハウルが放つ圧倒的な色気の半分は、声の主である木村拓哉の存在感によって形作られた。アフレコ現場において、宮崎駿監督は木村に対して細かな演技指導をほとんど行わなかったという逸話は有名だ。「そのままでいい」という監督の直感は、見事に的中した。
気だるげでありながら気品に満ち、どこか少年の無垢さを残した木村の声のトーンは、作画陣のアニメーションに生命を吹き込んだ。「うまく歩こうとしないで」「探したよ」というわずか数秒の台詞に込められたニュアンスが、絵の持つポテンシャルを何倍にも引き上げる。聴覚と視覚が奇跡的な調和を果たした瞬間だった。