1990年代後半の日本の冬は、今とは比較にならないほどの熱気に包まれていた。週末になれば車を走らせて雪山を目指し、誰もが最新のウエアと板を揃えたがっていた時代だ。その空気を完璧に捉えたのが、株式会社アルペンが打ち出した一連のマーケティング戦略だった。
当時、スキー・スポーツ用品業界は過酷なシェア争いの真っ只中にあった。その中で同社が選択したのは、従来のプロアスリートを前面に出す硬派な手法ではなく、若者の「恋愛とレジャー」を結びつける親しみやすい演出だった。加藤晴彦が演じた「少しドジで憎めない、等身大の男の子」は、視聴者に『自分たちの物語』だと思わせる強烈な説得力を持っていたのだ。