文学の歴史においても、この地は特別な意味を持つ。江戸時代のベストセラー作家である十返舎一九が著した滑稽本『東海道中膝栗毛』において、名物のとろろ汁を巡る膝栗毛の主人公・弥次さん喜多さんの滑稽なやり取りは有名な語り草だ。夫婦喧嘩に巻き込まれてとろろ汁を食べ損ねるというエピソードは、当時の民衆に爆笑を誘い、店の知名度を爆発的に高めた。
こうした歴史的背景と文化覚書の蓄積が高く評価され、文化庁が認める日本遺産「駿州の旅」の構成文化財としても正式に認定されている。浮世絵に描かれた風景と文学作品に刻まれた物語が、現代の空間と交差する奇跡的な体験がここにはある。