報道各社の現場取材や被災者の証言を振り返ると、青空が広がった瞬間の油断が惨事を招いたケースが数多く記録されています。
典型的な事例が「吹き返し」の強風による転落事故です。台風の中心が東へ抜けると、風向きは北寄りから急激に強い南風へと反転します。青空が見えたことで「もう大丈夫だ」と安堵し、破損した雨どいや瓦の様子を見ようと屋根に登った住民が、突然の突風にあおられて転落する事故が後を絶ちません。日本損害保険協会や自治体の防災担当者も「台風通過当日、風が完全に収まる前の高所作業は絶対に避けてほしい」と繰り返し警鐘を鳴らしています。
さらに恐ろしいのが、時間差で襲いかかる「河川の増水と土砂災害」です。地元では完全に雨が止み日差しが降り注いでいても、数十キロ離れた上流の山間部に降った膨大な雨水が、数時間から半日遅れて中下流域へ流れ込んできます。支流の水が本流に排水できなくなるバックウォーター現象や、水分を限界まで含んだ斜面が晴天時に突如崩落する土砂災害は、台風一過の午後に最も警戒すべき盲点です。
都市部においては「交通インフラの乱れ」が生活を直撃します。鉄道各社が事前に実施した計画運休は、台風が抜けたからといって即座に解除されるわけではありません。線路上への倒木確認、架線の点検、車両の安全点検などを経て運行再開に至るため、運転再開直後の主要駅では猛烈な入場規制と数時間の電車遅延が発生します。炎天下の駅前ロータリーで長時間待機を強いられ、熱中症で救急搬送されるケースも現場で頻発しています。