ネット上の陰湿な嫌がらせが法的な一線を完全に越えたのは、2019年初頭のことでした。堀ちえみのアメブロ公式コメント欄に対し、「死ね」「消えろ」「殺されても仕方がない」といった直接的な危害予告や人格否定の言葉が、同一人物から数百件にわたって執拗に送りつけられたのです。
身の危険を感じた堀ちえみ側は警視庁へ被害届を提出。捜査の結果、2019年6月に東京都内在住や北海道在住の50代女性が脅迫容疑で書類送検・逮捕されるという事態へと発展しました。取り調べに対し被疑者が「みんなが書き込んでいたので自分もやってしまった」「本当に殺すつもりはなかった」と供述した事実は、集団心理に麻痺した匿名ユーザーの無責任さを白日の下に晒し、世間に大きな衝撃を与えました。
しかし、彼女の闘いは警察沙汰の1件だけでは終わりませんでした。家族と自身の尊厳を守るため、夫である尼子勝紀氏の全面的なサポートのもと、弁護団を結成して匿名掲示板「ママスタ」やSNS上の悪質投稿者に対する「発信者情報開示請求」および損害賠償請求訴訟を次々と提起したのです。
当時の特番インタビューや手記において、彼女は当時の心情を次のように明かしています。
「病気と闘い、生きるか死ぬかの瀬戸際にいるときでさえ、家族が傷つけられる姿を見るのが一番辛かった。もう泣き寝入りは絶対にしない。法的な手続きを取り、誰がどのような責任を負うべきかを明確にすることが、今後のネット社会にとっても必要だと確信した」
東京地方裁判所での審理を経て、悪質な投稿者に対しては数十万から百万円単位の損害賠償命令や示談金の支払いが命じられ、中には刑事告訴によって侮辱罪などで略式起訴されるケースも相次ぎました。この徹底した法的措置は、それまで「有名税」として片付けられがちだった芸能人へのネットリンチに対し、明確な法的制裁が下るという強力な前例を打ち立てたのです。