だが、その風情ある音風景に今、異変が起きている。2026年現在の日本列島は、地球規模の気候変動による記録的な猛暑に見舞われており、これがヒグラシの生態に直接的な影響を及ぼしているのだ。
本来、ヒグラシは気温が25度〜28度前後の涼しい環境を好み、日中の熱気の中では鳴くのを止める傾向がある。しかし、近年の都市部や平野部では夕方になっても気温が30度を下回らない日が珍しくない。結果として、平野部ではヒグラシの姿が急減し、より標高の高い山間部へと生息域を移す現象が全国各地で報告されている。東京郊外の丘陵地帯でも、「かつては7月下旬から聞こえていた鳴き声が、8月末の秋風が吹く頃まで聞こえなくなった」という声が増えている。