『古事記』という書物は、もともと天武天皇の命を受けた稗田阿礼が暗誦した膨大な伝承を、太安万侶が編纂して文字に残した国家プロジェクトだった。口伝の熱量をいかに文字へ落とし込むかという当時の苦心は計り知れない。
その古代の情熱を、現代の視覚表現へと変換したことこそが最大の功績と言える。文字だけではイメージしづらかった国生みや神々の誕生が、ダイナミックなコマ割りで再現される。歴史の授業で丸暗記させられた無機質な記号が、情熱的なキャラクターとして動き出す瞬間のカタルシスは、まさに歴史漫画ならではの醍醐味である。