2010年代前半、日本のテレビ界には空前絶後のシェフブームが吹き荒れていた。その中心にいたのが、新進気鋭のオーナーシェフとして一躍脚光を浴びた川越達也氏である。
軽妙なトークと華やかなヴィジュアル、そして確かな腕前。深夜のバラエティ番組からゴールデンタイムの特別番組まで引っ張りだことなり、従来の料理人の枠組みを遥かに超えたスター性を発揮した。しかし、メディア出演が絶頂に達する一方で、本業である店舗運営との両立や連日の過密スケジュールによる疲弊は限界に達しつつあった。時代の寵児ゆえの葛藤が、静かな撤退の伏線となっていたのだ。