物語の冒頭、夕暮れの帽子屋に忽然と現れた荒地の魔女は、ソフィーに対して「ずいぶん安物の帽子ね。あなたも十分安っぽいけど」と言い放ち、有無を言わさず90歳の老婆に変える呪いをかけました。この理不尽とも思える凶行の背景には、ハウルに対する強い執着と嫉妬心が渦巻いています。
直前のシーンで、ソフィーは街中でナンパ兵士に絡まれていたところをハウルに助けられ、宙を歩く空中散歩を体験していました。このときハウルを追っていたのが、黒いシルクハットを被ったゴム人間の使い魔たちです。使い魔を通じて一部始終を把握した荒地の魔女は、「あのハウルが自分以外の若い娘と親しげにしている」と察知し、強い敵愾心を抱きました。
魔女がソフィーにかけた呪いは、単に容姿を老化させるだけではなく「呪いについて他人に話すことができない」という二重の制約が組み込まれていました。ハウルへの直接的な復讐というよりは、「ハウルが興味を持った娘の若さと美しさを奪って見せしめにする」という、歪んだ自尊心と当てつけによる犯行だったと言えます。