華々しい成功体験や劇的なビフォーアフターがメディアを賑わす一方で、マウスピース矯正には見過ごすことのできない深刻なリスクと失敗談が存在します。ネット上の掲示板やSNSでは、「マウスピース矯正を始めたが途中で断念した」「歯並びは揃ったが噛み合わせがおかしくなった」という悲痛な告白が後を絶ちません。
芸能界における歯列治療の歴史を振り返ると、かつては「短期間で白い歯を手に入れたい」という焦りから、健康な歯の神経を抜き、大量に歯を削ってセラミッククラウンを被せる治療が横行しました。その結果、数年後に歯根の破折や歯肉の黒ずみ、慢性的な顎関節症に苦しむタレントが少なからず存在したという苦い過去があります。その反動として「自分の天然歯を残して動かす」マウスピース矯正が爆発的に支持されたわけですが、ここにも別の落とし穴が潜んでいます。
マウスピース矯正における最大の失敗原因は、「自己管理の破綻によるアライナーの浮き」です。アライナーは1日最低20時間、推奨22時間以上の装着が絶対条件とされています。しかし、外食が続いたり、間食のたびに取り外して歯磨きをする手間を億劫に感じたりして装着時間が15〜16時間程度に落ち込むと、歯の移動がデジタルの計算から遅れ始めます。わずかなズレを放置したまま次のステージのマウスピースへ無理に進むと、装置が歯から浮き上がり、最悪の場合は歯根が骨を突き破る「骨外突出」や、歯の神経が死んでしまうリスクに直面します。
さらに深刻なのが、治療完了後に訪れる「後戻り(リラプス)の真相」です。矯正装置によって歯を動かし終えた直後の骨は、まだゼリー状のように柔らかく不安定な状態にあります。この骨が完全に硬化するまでの「保定期間」に、リテーナーと呼ばれる保定装置を指示通りに装着し続けなければ、歯は元あった位置に戻ろうとする強烈な生体反応(後戻り)を起こします。
ある有名タレントがテレビ番組で「せっかく2年かけて矯正したのに、リテーナーをサボっていたら元の歯並びに戻ってしまい、結局数百万円をドブに捨てて再矯正することになった」と告白したように、後戻りの悲劇は一般人・芸能人を問わず頻発しています。「マウスピースを外した瞬間がゴールではない」という冷徹な事実を認識していないことこそが、失敗を生み出す最大の温床となっているのです。