二人のライバル関係において最大のハイライトとなったのが、2026年1月から3月にかけて行われた第72期ALSOK杯王将戦七番勝負です。タイトル通算100期を目指す挑戦者・羽生善治九段と、初防衛を目指す王者・藤井聡太王将(当時五冠)の激突は、全国的なフィーバーを巻き起こしました。
戦前の大方の予想では「勢いに乗る藤井のストレート防衛もあるのではないか」と囁かれていました。しかし、開幕局から羽生は独創的な序盤作戦と変幻自在の手順で藤井を猛追。第2局、第4局で羽生が勝利をもぎ取った瞬間、対局場には異様な熱気が立ち込めました。
特に羽生が勝利した第4局では、現代AIが序盤で推奨しないクラシカルな戦型を採用し、複雑な乱戦へと引きずり込んで藤井の正確無比な計算を狂わせるという、まさに「人間の勝負勘の極致」を見せつけました。結果は藤井が4勝2敗で防衛を果たしたものの、終局後の共同記者会見で両者が見せた充実した表情は、単なる勝敗を超えて「将棋というゲームの深淵を二人で探求した」という畏敬の念に満ちていました。