2000年6月25日、大阪市内の小学生数名が「雪印低脂肪乳」を飲んだ直後に激しい嘔吐や下痢、腹痛を訴えたことから事態は動き始めました。異変は瞬く間に近畿地方全域へ拡大し、わずか1週間余りで被害者は数千人規模へ膨れ上がりました。最終的な被害人数は1万4,780名(重症入院患者を含む)に達し、日本の衛生行政史上、前代未聞の集団食中毒事件として記録されています。
当時の医療現場は野戦病院のような混乱に陥りました。特に抵抗力の弱い乳幼児や児童、高齢者の症状は深刻で、脱水症状により点滴治療を受ける患者が病床を埋め尽くしました。近畿一円の学校給食やスーパーマーケットの店頭から雪印製品が一斉に撤去され、店頭は異様な静けさに包まれました。
報道各社の当時の取材アーカイブを紐解くと、被害者家族の手記には「毎朝信じて飲ませていた牛乳で、子どもが一晩中苦しみ続けた」「企業を信じたことを後悔した」という痛切な声が残されています。単なる一企業の過失にとどまらず、日本の食卓全体の安全神話を根本から打ち砕いた瞬間でした。