山田洋次監督の経歴を語る上で欠かせないのが、半世紀以上にわたる圧倒的なフィルモグラフィです。東京大学法学部を卒業後、1954年に助監督として松竹へ入社した監督は、庶民の喜怒哀楽を徹底したリアリズムと温かなユーモアで描き出してきました。
国民的映画となった『男はつらいよ』シリーズは、1969年の第1作公開から1996年の渥美清さんの急逝、そして2019年の第50作『お帰り 寅さん』に至るまで、ギネス世界記録にも認定される前人未到の記録を樹立。主人公・車寅次郎と妹・さくらを演じた倍賞千恵子さんとの絆は、日本人の家族像の象徴となりました。
さらに、高倉健さん主演で第1回日本アカデミー賞の主要部門を総なめにした『幸福の黄色いハンカチ』、小津安二郎監督へのオマージュを込めた『東京家族』、そして初の本格時代劇として米国アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた『たそがれ清兵衛』など、時代ごとに邦画界の頂点を極めています。
これらの作品群に加え、2012年には長年の文化芸術への貢献が称えられ、映画監督として最高峰の栄誉である文化勲章を受章しました。興行的な成功と芸術的な批評性の双方を高い水準で両立させ続けた足跡は、世界の映画史でも稀有な例です。