「たかが数日の欠勤理由をごまかすだけ」「会社もわざわざ病院に電話確認などしないだろう」という油断こそが、身を滅ぼす最大の落とし穴です。実務の現場において、提出された診断書の偽造がバレる理由は極めてシステマチックに構築されています。人事労務担当者や学校の事務組織は、日頃から数多くの正規診断書を処理しており、素人が作った偽文書には違和感しか覚えません。
発覚に至る主なルートは、以下の3つの防壁によって形成されています。
第1に、病院の書式・医療機関コード・印影の不整合です。正規の診断書には、医療機関ごとの固有番号、正確な所在地・電話番号、医師の医籍登録名、そして病院の公印や医師個人の職印が厳格なルールに基づいて押印されています。ネット上で拾ったテンプレートに適当な病院名を当てはめたり、三文判を押したりしたものは、フォントのズレや印影の鮮明さ、角印と丸印の使い分けの誤りなどから、提出された瞬間に偽造を疑われます。
第2に、人事労務部による医療機関への電話確認と照会手続きです。長期欠勤や休職の手続き、あるいは傷病手当金の申請が絡む場合、会社側は就業規則に基づき、診断書を発行した病院に対して「この文書は貴院で発行されたものに相違ないか」という事実照会を実施します。個人情報保護法があるため病状の詳細までは明かされなくても、「その日時にその医師が診断書を発行した事実の有無」という事務的記録の存否は、医療機関側も即座に回答します。カルテに記録が存在しない以上、受電した病院側から「そのような診断書は当院では発行していません」と回答され、その場で偽造が確定します。
第3に、病名と医学的所見の不自然さです。医師が書く診断書には、専門用語の用い方や「加療を要する期間」の算出基準に特有の慣例があります。素人がネットの文面をツギハギして作成した文章は、主訴と診断名、必要な休養期間の整合性が取れておらず、産業医や顧問医のチェックを受けた段階で一目で看破されます。