本作の原作は、漫画家・石坂啓が手掛けた同名の名作コミックだ。テレビ朝日の木曜ドラマ枠で満を持して映像化された際、主演を務めた木村拓哉の役柄は、それまでの彼のパブリックイメージを鮮やかに裏切るものだった。事故によって直近5年間の記憶を消失し、手元に残された10本の鍵を頼りに、自らの過去と「本当の自分」を探す旅に出る男・家路久。エリート銀行員として冷徹に生きていた過去と、記憶を失って優しさを手に入れた現在の落差が、観る者に強烈な問いを突きつけた。
当時、STARTO ENTERTAINMENTのトップランナーとして第一線を走り続けていた彼が、弱さと迷いを抱えた父親像をリアルに体現した点は、大きなターニングポイントとして今も語り継がれている。かつて数々の名作テレビドラマの金字塔を打ち立ててきた彼が、不気味さと哀愁が同居する複雑な役どころに挑んだ本作は、まさに新境地を開拓した記念碑的一作と言える。