伊藤剛俊のインスピレーションの源泉の一つは、中世ヨーロッパのゴシック建築や古典的な幾何学装飾にあります。大聖堂のステンドグラスを支える石造りの薔薇窓、尖頭アーチの伸びやかなライン、そして聖堂内部に差し込む神秘的な光。
彼はそれら巨派建築の要素を、手のひらや両手で包み込める器という小宇宙へと凝縮させました。
空間を浸食する影の表現
伊藤の作品は、作品単体で完結しません。光が照射されたときに真の姿を表します。強い光を当てると、透かし彫りの穴を通して壁面やテーブルの上に、万華鏡のような複雑な影のパターンが投射されます。
器という三次元の物体が、周囲の二次元空間に影のグラフィックを描き出す。伊藤は「物体そのもの」をつくると同時に、「光と影がつくる空間」をデザインしていると言えます。