若隆景を襲った右膝の大怪我は、兄弟にとっても最大の試練だった。関脇として大関獲りを期待される中での長期離脱。番付は幕下まで急降下した。一時は絶望感すら漂ったが、彼は諦めなかった。影で支えたのが、同じ土俵で戦う兄たちの存在だ。
リハビリ期間中、若元春は幕内で勝ち星を重ねながら弟の復活を待ち続けた。「あいつが戻ってくる場所を守る」——そんな無言のプレッシャーと温かい激励が、若隆景の闘志に火をつけた。関取復帰、そして幕内への再登板。土俵へ戻った若隆景の力強い下半身と鋭い立ち合いは、苦難を糧にして一回りも二回りも強くなった男の姿そのものだった。