『ヤヌスの鏡』の最大の魅力は、なんといっても杉浦幸が演じた「小沢裕美」と「大石ユミ」という光と影の演じ分けにありました。宮脇明子の同名少女漫画を原作とした本作は、厳格すぎる家庭環境で抑圧された少女が、もうひとつの凶暴な人格を解き放ってしまうという衝撃的なサスペンス・ドラマです。
昼の小沢裕美は、お下げ髪にメガネをかけ、厳格な祖母の折檻に怯える大人しい優等生。しかし、強いショックを受けると人格が豹変し、夜の顔である大石ユミが現れます。ユミに変身すると、濃いメイクに革ジャン姿で夜の街へ繰り出し、木刀を振り回して不良グループを叩きのめすという、当時のテレビドラマとしても類を見ない過激なキャラクターでした。
演技経験が全くない状態での主演抜擢だったにもかかわらず、裕美の持つ儚げな透明感と、ユミが見せる冷酷で狂気に満ちた眼光を見事に切り替え、視聴者に強烈なトラウマとカタルシスを同時に植え付けました。この演技が評価され、彼女は一躍トップアイドルへと駆け上がることになります。