遊真が左手中指にはめる黒い指輪。それは、近界の苛烈な内戦で致命傷を負った息子を救うため、父・空閑有吾が自らの全トリオンと命を注ぎ込んで生み出した奇跡の産物だ。通常の人間であれば命を落としていたはずの遊真の肉体は、死に瀕した状態で指輪の中に封印され、外殻としてトリオン体が生成された。白髪と赤い瞳、そして成長が止まった体は、彼が「すでに肉体的な生を停止している」事実を生々しく物語る。
有吾が遺したのは、単なる強力な武具ではない。息子の命を繋ぎ止め、彼が生き抜くための盾であり鎧そのものだった。父から託された膨大なトリオン量と特殊な構造は、近界の列強国が所有する国家級の兵器と比較しても異質の完成度を誇る。情愛と技術の極致が融合したこの遺産こそが、過酷な近界を生き抜いてきた遊真のバックボーンである。