結論から言えば、富士山は静岡県と山梨県の両方にまたがって存在している。裾野から7合目付近までは明確に両県の境界線が引かれているものの、標高約3,360メートル以上の「8合目から山頂」にかけては県境が一切定められていない。
国土地理院が発行する2万5千分の1地形図を見ても、山頂部付近では県境を示す点線が忽然と消えている。これは行政上のミスや未調査によるものではなく、国と自治体が協議した結果として意図的に「境界未定」のまま残されているのだ。
境界を確定させない背景には、無理に線を引くことで生じる固定資産税の配分問題や、地元住民の感情的対立を避けるという高度な政治的・歴史的配慮がある。あえて境界を決めない「グレーゾーン」とすることで、双方が富士山を尊び、平和に共有する知恵が現代まで受け継がれている。