日本の二大染色技法として並び立つ京都の京友禅と金沢の加賀友禅。一見すると似通っているように思えるが、その美学と制作プロセスには決定的な違いが存在する。日本の代表的な友禅染の系譜でありながら、なぜこれほどまでに異なる表情を見せるのか。
最大の相違点は、装飾手法とデザインの表現手法にある。京友禅が金箔や刺繍、絞り染色などを豪華にあしらい、洗練された都会的な意匠や抽象美を追求するのに対し、加賀友禅は一切の刺繍や金銀箔を排する。職人の手挿しによる絵画的な美しさだけで勝負するのだ。
色彩のボカシ技法においても対照的だ。京友禅が中心に向かって淡く染める「内ぼかし」を多用するのに対し、加賀友禅はモチーフの外側から内側に向けてぼかしを入れる「外ぼかし」を得意とする。この技法によって、花びらや葉の立体感が圧倒的なリアルさをもって浮かび上がる。