『みんなのうた』の歴史は、そのまま戦後日本のポップス史およびアニメーション表現の進化史と重なります。黎明期である昭和30〜40年代は、世界の民謡や唱歌の紹介が主軸でしたが、1970年代に入ると番組オリジナルの歌謡曲・フォークソングが次々と国民的ヒットを記録するようになります。
その象徴と言えるのが、1976年に放送された『山口さんちのツトム君』(作詞・作曲:みなみらんぼう)です。斉藤こず恵盤や川橋啓史盤などを合わせたレコード総売上は150万枚以上のミリオンセラーを達成し、社会現象を巻き起こしました。当時のみなみらんぼう氏の証言によると、この楽曲は単なる童謡ではなく「田舎から上京した自身が見つめた、どこか物憂げな都会の鍵っ子たちの日常」が投影されていました。「ツトム君のママが田舎へ行っている」という不在の寂しさを通じて、高度経済成長期における核家族化や母子関係のあり方を静かに描写していた点が、子どもだけでなく親世代の心をも掴んだ決定打でした。
その後も、1970年代から80年代にかけて『北風小僧の寒太郎』(堺正章/北島三郎)や『コンピューターおばあちゃん』(酒井司優子/編曲:坂本龍一)など、シンセサイザーや最新鋭のテクノポップを取り入れた挑戦作が続々と誕生します。昭和の名曲一覧を振り返ると、いずみたく、すぎやまこういち、加藤登紀子といった一流の音楽家が惜しみなく才能を注ぎ込んでいたことが分かります。
平成に入ると、J-POPの第一線で活躍するシンガーソングライターの書き下ろしが急増します。宇多田ヒカルの『ぼくはくま』(2006年)、BUMP OF CHICKENの『魔法の料理 〜君から君へ〜』(2010年)、アンジェラ・アキの『手紙 〜拝啓 十五の君へ〜』(2008年)など、平成の隠れた名曲群は、個人の内省的な葛藤や成長の痛みを鮮やかに描き出し、番組のターゲット層をティーンエイジャーや大人へと大きく拡張させました。