日本国内でこの議論が一気に沸騰した契機として、2019年に放映されたNHKスペシャル『彼女は安楽死を選んだ』を外すことはできない。神経難病に侵された日本人女性がスイスへ渡航し、家族に見守られながら点滴のストッパーを自ら外す姿は、視聴者に強烈な衝撃を与えた。現在もNHKオンデマンドなどで視聴され続け、人間の尊厳ある生き方と死に方を巡る議論の原点として語り継がれている。
一方で、フィクションの世界でも急速にテーマ化が進んだ。映画『PLAN 75』は、75歳以上の高齢者に自ら死を選ぶ権利を与える架空の制度を描き、カンヌ国際映画祭をはじめ世界的な称賛を集めた。Netflixなどのグローバル配信プラットフォームを通じて、死の自己決定や高齢化社会のリアルを問い直すコンテンツは、いまや20代や30代の若年層にとっても他人事ではないテーマとして浸透している。生への執着と死の受容。映像メディアは、私たちが目を背けがちなタブーを鋭く抉り出している。