外科的に喉の粘膜や組織を切除する「声帯切除術」は、かつて住宅密集地における騒音対策の最終手段として一部で選択されてきた。確かに、術後は吠え声がカスレ声や吐息のような小さな音に変化するため、近隣からの苦情を一挙に回避できるという即効性を評価する声もある。飼い主が精神的に追い詰められ、愛犬を手放す最悪の事態を防ぐ防波堤として機能してきた側面も否定できない。
しかし、専門獣医師が警告するリスクとデメリットは極めて重い。手術後に切除部位の組織が異常増殖して瘢痕(はんこん)化し、気道を狭めて呼吸困難を引き起こす組織再閉塞のリスクがつきまとう。さらに、麻酔事故の危険性に加え、本来の声を失った犬が極度の精神的抑鬱に陥ったり、声による威嚇ができない焦りから噛み癖を悪化させたりするケースも報告されている。後悔しないためには、表面的な静寂と引き換えにする代償の大きさを直視しなければならない。