今日のワイヤレス通信を形作った歴史を紐解くと、意外なドラマに突き当たる。無線通信の干渉を防ぐ「周波数ホッピング技術」の特許を1940年代に取得したのは、ハリウッドの大女優ヘディ・ラマー(Hedy Lamarr)だった。魚雷の無線誘導を敵の妨害電波から守るために考案された彼女の直感的なアイデアは、現代のスペクトラム拡散技術の揺るぎない土台となった。
そして1990年代、オーストラリアの電波天文学者ジョン・オサリバン(John O'Sullivan)が率いるチームが、ブラックホールから届く微弱な電波ノイズを解析するために数学的手法(高速フーリエ変換)を応用。室内で電波が壁に反射して起こるマルチパス干渉を打ち消すOFDM(直交周波数分割多重)回路の特許を取得した。このブレイクスルーをIEEE(米国電気電子学会)が採用したことで、超高速無線LANの実用化が一気に加速したのだ。