八坂神社の門前町として栄えた祇園の地で、元禄16年(1703年)に産声をあげた原了郭。一般的な七味唐辛子とは一線を画す、あの黒褐色に輝く粉末はどのようにして生まれたのでしょうか。そのルーツを紐解くと、劇的な日本の歴史と職人の飽くなきこだわりに行き当たります。
原了郭の歴史を語る上で欠かせないのが、赤穂浪士 歴史と経緯です。創業者である初代・原儀左衛門は、かの赤穂四十七士のひとり、原惣右衛門元辰(はらそうえもんもととき)の実子にあたります。討ち入りという激動の時代を経て、儀左衛門は剃髪して「了郭」と号し、祇園の地で医食同源の精神に基づいた香煎(こうせん)の商いを始めました。漢方の知見を活かして調合された「御香煎」は、明治期には宮内省御用達を賜るほどの名声を博し、その調合技術がのちの名作「黒七味」へと結実します。
黒七味が他社の七味と根本的に異なるのは、その色合いと独特のしっとりとした質感です。白ごま、唐辛子、山椒、青のり、けしの実、黒ごま、おの実(麻の実)という厳選された7種の素材を、秘伝の技法で丁寧にから煎りし、丹念に手揉みすることで素材本来の油分を引き出しています。この工程により、粉末全体が濃い茶褐色、すなわち「黒」へと変化するのです。舌に乗せた瞬間に広がる芳醇な香ばしさ、続いて鼻腔を突き抜ける山椒の爽やかな痺れ、そして最後にやってくる奥ゆかしい辛味。単なる「辛味足し」ではなく、料理そのものの輪郭を劇的に引き締める調味料として、ミシュラン星付きの料亭から家庭の食卓まで絶大な信頼を勝ち得ています。