音楽史を紐解くと、このコード進行のルーツは1980年代初頭の米国ブラック・コンテンポラリー/フュージョン・シーンに辿り着きます。グローヴァー・ワシントン・ジュニアがビル・ウィザースを迎えて大ヒットさせた名曲『Just the Two of Us』(1980年/1981年グラミー賞受賞)で世界中に認知されたことから、海外では「Just the Two of Us Progression」と呼ばれています。
洋楽の洗練されたR&Bコード進行であったこのパターンを、歌謡曲的な情緒あるメロディ、亀田誠治氏によるドライブ感あふれるベースライン、そして椎名林檎特有の文学的で退廃的なリリックと完全に融合させたのが『丸の内サディスティック』でした。
2000年代以降、このアプローチは日本の音楽シーンに絶大な影響を与えました。2026年代に入ってもYOASOBIの『夜に駆ける』、Official髭男dismの『Pretender』、藤井風の『きらり』、Vaundyの『怪獣の花唄』に至るまで、丸サ進行のエッセンスやその変形パターンが現代のヒットチャートを牽引し続けています。日本のリスナーがDNAレベルで惹かれる「哀愁と洗練のバランス」を完璧に体現しているからにほかなりません。