油屋を訪れた「腐れ神」の体内に刺さっていたのは、人間の捨てた自転車や生活ごみの山だった。千尋たちが総出でそれらを引っ張り出したとき、姿を現したのは神々しい河の神の素顔だった。その去り際、千尋の手のひらにそっと残されたのが「にがだんご」である。
興味深いのは、湯婆婆をはじめとする油屋の住人たちが、金品や豪華な宴に目がない一方で、この団子の価値にまったく気づかなかった点だ。外見は泥のように地味で、芳しい香りもない。だが、欲望に目が眩んだ大人たちには見えない本質的な力を、子供である千尋だけがまっすぐ受け取った。一見価値のないものの中にこそ、生命を根本から揺さぶる「本物の薬」が隠されているという逆説がここにある。