海水温の異常高昇は、台風の性質そのものを根底から塗り替えてしまった。かつては日本列島に近づくにつれて上空の偏西風や陸地の摩擦で勢力が弱まるのが一般的だったが、現在の紀伊半島沖はまるで巨大な温水プールだ。台風が上陸直前までエネルギーを補給し続け、衰退するどころか直前に「急発達」する現象が頻発している。
気象予報士たちを戦慄させているのは、勢力が衰えないまま大阪湾の奥深くへと入り込む進路だ。湾の形状がV字型に窄まっている大阪湾は、南西からの強風が吹くと海水を奥へ奥へと押し込み、記録的な高潮を引き起こしやすい構造的弱点を持つ。満潮時刻と台風の接近が重なった瞬間の破壊力は、都市のインフラ関係者が最も警戒するシナリオである。