スポーツを題材にした舞台作品において、最大の障壁となるのが「アスリート特有の身体操作」の表現だ。どれほどセリフに情熱を込めようとも、重心の置き方や一歩目の踏み出し方に違和感があれば、観客の没入感は一瞬で削ぎ落とされてしまう。
西垣はこの難題に対し、自身の身体感覚を極限まで研ぎ澄ますことで答えを出した。ピッチを切り裂くようなダッシュ、相手の逆をつく瞬発的なステップ、そしてボールを収める際の無駄のない軸のブレなさ。かつてフェンシングのピスト上で世界と戦った経験が、舞台上の「極限状態」に圧倒的な説得力を与えている。舞台上に引かれたラインの上が、本当に生き残りをかけた激戦区に見えるのだから恐ろしい。