逗子ストーカー殺人事件は、当時の法制度の致命的な穴を社会に突きつけました。当時施行されていたストーカー規制法では、つきまとい行為の類型として「電話やFAXの連続送信」は明記されていたものの、「電子メールの連続送信」が対象外となっていました。
そのため、加害者が1000通以上のメールを送りつけていた段階で、警察はストーカー規制法に基づく警告や接近禁止命令を迅速に出すことができず、脅迫罪という別件の刑法犯として対応せざるを得ないタイムラグが生じました。
この事件を契機として世論と法曹界が激しく動き、2013年にストーカー規制法が改正。電子メールの執拗な送信が明確に規制対象へと追加されました。その後も時代の変化に伴い、SNSのメッセージ機能や位置情報取得装置(GPS)を用いた監視行為の禁止など、継続的な法改正へとつながっています。行政窓口におけるDV・ストーカー被害者の住民票閲覧制限措置(支援措置)の運用厳格化も、本事件の痛切な教訓から生まれた制度設計です。