ゴイアニア被曝事故の被害規模は、一都市で起きた医療用放射線源の事故としては人類史上最大です。ブラジル政府および国際原子力機関(IAEA)の公式記録によると、事故発覚後にオリンピック・スタジアムに仮設されたスクリーニング施設で11万2,800人以上の市民が検査を受けました。その結果、249人に深刻な外部・内部汚染が確認され、129人に体内被曝が認められ、重篤な急性放射線症候群(ARS)を発症した20名が入院加療を余儀なくされました。
直接の急性放射線障害による死者は、少女レイデ、その叔母であるエルバ(37歳)、スクラップ工場の従業員2名(18歳と22歳)の計4名に上ります。その後も長期的な被曝影響により、数十名が白血病や多臓器不全、悪性腫瘍などで命を落としたとされています。この深刻度から、本事故は国際原子力事象評価尺度(INES)において、アメリカのスリーマイル島原発事故と同じ「レベル5(施設外へのリスクを伴う事故)」に分類されました。
1986年にソビエト連邦で発生したチェルノブイリ原発事故(レベル7)と比較すると、ゴイアニア事故の特異性がより明確になります。チェルノブイリは原子炉の暴走と爆発火災により、ヨウ素131やキセノンなど多種多様な核分裂生成物が超高熱の煙とともに成層圏まで吹き上がり、広大な気象変動に乗ってヨーロッパ全域へ拡散しました。
対照的にゴイアニア事故は、原子炉ではなく単一核種(セシウム137)の密封小線源が、人間の移動、売買、物理的な手渡しによって市街地のコミュニティ深くに浸透した「点光源の生活圏拡散」でした。大規模な爆発や煙がなかったにもかかわらず、極めて高濃度の汚染が個人の家屋内や衣服、家具、土壌に直接付着した点において、管理なき放射線源がいかに身近で致命的な脅威となるかを世界に証明することとなったのです。