この単語を一躍世界的なポップカルチャーの第一線へと押し上げたのが、天才監督ブラッド・バードの手掛けた名作映画だ。一見すると、主人公の超人的なパワーを単純に称えるストレートなヒーロー名に見える。しかし、映画『Mr.インクレディブル』の題名に込められた真の意図は、もっとひねくれた、皮肉の効いた人間ドラマにある。
作中におけるヒーローたちは、政府の施策によって力を封印され、市井の隠遁生活を余儀なくされる。「信じられないほどの力」を持ちながら、それを隠して「取るに足らない凡人」として生きなければならない葛藤。監督ブラッド・バードは、主人公が抱える「世間から信じてもらえない不条理」と「規格外の偉大さ」という二つの対極的な意味合いを、タイトルの一言に見事に凝縮させてみせたのだ。