恐怖の質は作家のルーツによって驚くほど異なる。先ほど挙げた貴志祐介の作品が「日本的な密室性の恐怖」と「人間の精神のバグ」を冷徹に描写するのに対し、モダンホラーの巨匠スティーヴン・キングは「孤立した空間における人間の崩壊」を圧倒的な描写力で描き出す。
キングが提示する恐怖は、登場人物のトラウマや弱さに付け込む。迫り来る怪異そのものよりも、恐怖によって暴かれていく人間関係の脆さこそが、読者の胸を強く締め付けるのだ。日米を代表する巨匠たちが仕掛ける罠は、読者が最も見たくない自分自身の暗部を容赦なく照らし出す。