有効成分であるポビドンヨードは、極めて高い殺菌能力を誇る。試験管内の実験において、インフルエンザウイルスや各種細菌を短時間で不活性化することは揺るぎない事実だ。この強力な作用こそが、長年にわたり医療現場で消毒剤として信頼されてきた理由である。
だが、生体の複雑な粘膜構造においては事情が異なる。国際的な医学文献データベースであるPubMedに収載された論文群を紐解くと、ポビドンヨードの頻回使用が上皮細胞に与える細胞毒性への言及が散見される。強い消毒力がウイルスだけでなく、喉を守る正常な細胞まで攻撃してしまうという二重性だ。
つまり、喉の表面を無菌状態にしようとする試みが、結果としてウイルスの侵入を容易にする「空き家」状態を作り出しかねない。殺菌力の高さと生体バリアの保護は、常に表裏一体の緊張関係にある。