土屋賢二氏の人気の根底には、本物の一流哲学者としての確固たる知性があります。東京大学大学院で哲学を専攻し、お茶の水女子大学で長年にわたり論理学や哲学の教鞭を執ってきた経歴は伊達ではありません。
ソクラテスの問答法をはじめとする哲学の手法を、日常の些細な出来事や夫婦喧嘩に応用したことが、ツチヤ教授の生み出した最大のイノベーションでした。「正しい論理を積み重ねていくと、なぜかおかしな結論にたどり着く」というパラドックスの面白さを、一般読者向けにわかりやすく提示した功績は極めて大きいと言えます。
難解と敬遠されがちな哲学の敷居を極限まで下げ、「物事を疑い、深く考えることはこんなにも笑えることなのか」と世に知らしめた実績は、今なお色褪せることがありません。