華やかな山側の食文化とは対照的に、海沿いの長田エリアには泥臭くも愛おしい下町のソウルフードが息づいている。その代表格が、焼きそばとご飯を鉄板上で小気味よく刻み合わせる「そばめし」だ。
昭和の高度経済成長期、町工場の労働者たちが冷えた弁当の白飯をお好み焼き屋の鉄板に持ち込み、「そばと一緒に炒めてくれ」と頼んだことから生まれた偶然の傑作。コテとテコがぶつかり合う乾いた金属音、立ち上る湯気。そして、ウスターソースの熟成沈殿物から作られる激辛の「どろソース」が焦げる匂いが食欲を激しく刺激する。洗練とは真逆のベクトルにあるこの力強い味わいは、地元民の日常に深く根差し、今なお色褪せない熱量を放ち続けている。