梅仕事で最も多い失敗相談が「表面に白い泡が浮いてきた」「アルコールのような匂いがする」という発酵現象です。この原因は、梅の皮に付着している天然の「野生酵母」が、室温の上昇(25℃以上)と糖濃度の偏りによって活発化し、糖分をアルコールと二酸化炭素に分解してしまうことにあります。
さらに見逃せないのが「カビ」との判別です。液面にふわふわとした綿状の浮遊物(黒・青・緑)がある場合は有害なカビですが、表面に薄い白い膜が張ったり細かい気泡が出たりしている状態は、酵母による「産膜酵母」または初期発酵です。
このトラブルを未然に防ぐ決定打となるのが、仕込み時に加える「りんご酢(またはホワイトリカー)」です。梅1kgに対してりんご酢50ml(大さじ3杯強)を回しかけるだけで、pH値が酸性に傾き、酵母の暴走と雑菌の繁殖を完璧に抑え込みます。お酢のツンとした酸味はエキスの甘みと調和し、驚くほどスッキリとした後味に仕上がります。
もし発酵が始まってしまった場合でも、初期段階であれば救済可能です。梅の実を取り出し、シロップだけを鍋に移して70〜80℃の弱火で約15分間加熱(火入れ)します。酵母を失活させてアクを丁寧に取り除き、清潔な耐熱容器に移して粗熱を取れば、風味を損なわずに美味しく飲み切ることができます。