『エヴァンゲリオン』の企画が立ち上がった1990年代半ば、14歳の多感な少年のキャスティングは制作陣にとって最大の難関でした。男性声優では大人の響きが出てしまい、典型的な少年声優では主人公が抱える「逃げ出したいほどの絶望と孤独」を表現しきれないという課題に直面していたのです。
そこで白羽の矢が立ったのが、当時『幽☆遊☆白書』の蔵馬役や『美少女戦士セーラームーンS』の天王はるか(セーラーウラヌス)役で圧倒的な支持を集めていた緒方恵美でした。庵野秀明監督は、緒方の持つ「少年とも少女ともつかない中性的な響き」と、感情をストレートにぶつける生々しい芝居に強い関心を寄せました。
オーディションの場において、庵野監督は緒方の第一声を聞いた瞬間に「シンジがここにいる」と確信したと振り返っています。綺麗に整えられたアニメ声ではなく、思春期の生々しい息遣いや心理的葛藤を表現できる役者として、満場一致で碇シンジ役に抜擢されました。