創業400年以上の歴史を誇る老舗「丁子屋」の名物とろろ汁の秘密とは何か。その答えは、こだわり抜かれた極上の自家製出汁と、静岡県産の粘り強い山芋との至高の調和にある。皮ごとすり鉢ですり下ろされた自然薯に、駿河湾の自家製鰹節から引いた一番出汁、そして創業当時から守り続けられている白味噌が絶妙な塩梅で合わさることで、奥深いコクと上品な風味が生まれる。ひとくち口に含めば、皮の香ばしさと山芋の甘みが一気に広がり、何杯でも麦飯が進む。
この極上の味は、浮世絵師の歌川広重が描いた傑作『東海道五十三次』の「丸子」の図にも鮮明に残されている。茶店で名物のとろろ汁を味わう旅人の姿を描いたその画は、江戸の人々に「丸子に行けば絶品のとろろ汁が食べられる」という強い憧れを植え付けた。当時の旅人たちが脚絆を濡らしながら東海道を歩み、疲れた体を癒やした味わいが、令和の現代にも寸分違わず受け継がれている奇跡には驚かざるを得ない。