松本清張が名付けた『日本の黒い霧』という言葉は、出版直後から「権力の背後に潜む不透明な癒着や不正」を指す社会的な代名詞として定着しました。
特に歴史上有名なのが、1966年に佐藤栄作内閣下で相次いだ自民党内の汚職スキャンダル(共和製糖事件、田中彰治代議士の恐喝事件など)です。マスコミはこれを「黒い霧」と呼び、世論の反発を受けた佐藤首相が衆議院を解散したことで「黒い霧解散」という政治史用語が誕生しました。
さらに1969年から1971年にかけて日本スポーツ界を揺るがしたのが、プロ野球の黒い霧事件です。西鉄ライオンズの所属選手をはじめとするプロ野球関係者が、暴力団関係者が関与する野球賭博において意図的な敗退行為(八百長)を行っていたことが発覚。多数の現役選手が永久追放処分を受けるなど、球界史上最大の暗黒期となりました。清張の著作が発端となったフレーズは、政治からスポーツに至るまで、社会の構造的腐敗を指し示す言葉として広く使われるようになったのです。